特定非営利活動法人浜松NPOネットワークセンター

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2017


はままつ子どものためのセーフティネット強化事業

複数の団体による「ネットワーク型の子ども支援」の取り組みにより、1)相談・学習支援・居場所づくりなどのモデル事業を市内各地へ普及し、支援できる地域を広げる。2)学校や民生委員・児童委員など地域との連携を深め、当事者の発掘をはかる。3)課題や支援情報、ノウハウを整理・共有し、提言することで、支援者・理解者を増やす。これらをもって浜松地域の「子ども支援のセーフティネット」を強化することを目指しました。

1)福祉・教育相談

(1)日常の福祉・教育相談

13人から相談があり、相談者5人がのべ30回対応した。家庭環境、不登校、進路・進学、障害に関する相談が多かった。

(2)県立高校定時制「校内カフェ」

放課後に「校内カフェ」の形で相談会を5回開催、計136名の高校生(全校の約半数)が参加した。相談員2名が雑談の中から進路、就職、家族、生活などの悩みを拾った。

◆定時制高校は、不登校経験者や外国ルーツほか様々なハンデやリスクを抱えている生徒が多い。中退率も高いが、学校というルートを一旦外れると、学び直しや再就職に関するセーフティネットが脆弱である。公的な相談窓口を知らなかったり、窓口を知っても知らない人に相談することはハードルが高い。そのため、学校の中に「学校でも家庭でもないサードプレイス」をつくり、ふらっと立ち寄ってお菓子を食べながら雑談する中で、進路や就労、学校、家庭の悩みを拾っていくのが「校内カフェ」のねらいである。先生でない外部の人とつながるきっかけとして、大阪や神奈川で始まった手法。
雑談から困難の兆候をどうキャッチするか、情報をどこまで共有するか、相談人材の確保やルールづくりが今後の課題。

2)子どもたちの学習・習い事支援

交通手段や交通費がネックで学習支援教室に行けない、大勢いる場所に通う元気がないといった、多様な子どもたち一人一人のニーズに応える形態として、週1~2回の学習支援を家庭訪問型、連携塾利用型の2タイプで学習支援を行った。
対象者:小学生 8名、中学生 9名、高校生 1名 計18名 のべ596回
教科:算数、数学、英語、国語・日本語、理科、図工・絵画、全般 支援者:8名
本人と保護者の意志は確認しているが、学習意欲が低い、自宅学習の習慣がない、学習方法がわからない、精神的に不安定、保護者の協力が得られないなどの課題もあり、子どもと信頼関係を築くことに時間がかかることも多かった。
対象者は、一人親、障害・疾患、DV・虐待経験などで、重複した困難を抱えていることも多く、適切な支援をするための丁寧なアセスメントの必要性を痛感した。困難ケースの学習支援については、臨床心理士のいる連携塾を利用した。
講師とは対象者ごとの月次報告で学習面の成果と課題や、生活や行動面の気になる点を共有。場合によってはケース会議を開いたり、スクールソーシャルワーカーなど外部の支援者につないだ。
支援依頼は、本人からではなく、大半は子ども関係団体や民生委員、SSWや区役所、相談機関からつながった。しかし、本人や保護者に支援を受ける意志がなくて、学習支援に至らなかったケースも数件あった。また、支援対象の線引きも難しく、経済的困窮なのかよくわからないケースもあり、紹介者とも相談しながら総合的に判断した。

3)居場所づくり

(1)「子ども食堂」

NPO法人えんあってが浜松市中区蜆塚で毎月1回開催。 
計11回、子ども62人、大人22人、その他5人、学生ボラ10人、スタッフ44人が参加

(2)「食べる・遊ぶ・つながる」

計4回、子ども82人、大人72人参加
◆「食べる・遊ぶ・つながる」では、あえて「貧困」という看板は一切出さず、気になる親子には直接声をかけた。その結果、子どもの遊び場が少なくて自由に遊べる場を求めている親子も含め、多様な親子が集まった。プログラムやサービスの提供は行わず、出入り自由、参加者がやりたい遊びや食べたいものを持ち寄る「参加者みんなでつくるイベント」を心掛けた。子どもたちの自由な遊びを見守りつつ、大人たちは食べ物を調理しながらおしゃべりする、緩い関係性をつくることができた。高齢者にも声をかけ、多世代交流や多文化交流の場にもなった。

(3)定時制高校「校内カフェ」

5回開催(再掲) 参加者:高校生136名
◆ジュースとお菓子、後半はフードバンクの丼物やスープも提供。高校生が帰り際に立ち寄り、就労サポーターや外部の大人、教員と雑談するコーナーを1時間~1時間半作った。全く顔を出さない子、1杯だけ飲んで帰る子、おかわりしてよく話す常連の子もいた。全校の約半数が参加。

4)関係機関ネットワークづくり

保育園・幼稚園、小中学校・高校、子ども・子育て支援団体、母子保健センター、浜松市の各区福祉課・子育て支援課・教育委員会、静岡県子ども家庭課、浜松市社協、地区社協、民生児童委員ほかを訪問し、事業説明とヒアリング、協力依頼を行った。

5)関係団体、関係者、アドバイザーの集まる「実行委員会」の開催

年6回開催、委員11名(フラットアイ、子ども育ちレスキューネット、えんあって、サステナブルネット、地域若者サポートステーションかけがわ、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、中区コミュニティソーシャルワーカー、POPOLO、新津地区民生委員)+事務局4名
◆子ども支援の実践者である連携団体と協力団体から11名に委員を依頼し、それぞれの事業の報告や最新情報、課題の共有を図った。守備範囲が異なる関係者が集まり、様々な角度からの情報提供をすることで、浜松地域の貧困の全体像が見えやすくなった。毎回、活発な意見交換が行われ、それぞれの得意分野が見え、信頼関係が構築されていったことで、参加団体間での相談や支援のリレーが多くなり、「子どもの貧困」に関わる浜松地域の包括的なセーフティネットが構築されてきた。
様々なケースに共通していたのは、複合的な困難と孤立。見えてきた課題として「複数の支援者が関る場合の連携方法、情報共有の範囲やルール」「小中高校の支援情報のリレーと連携」「複数困難を抱えた家庭のアセスメント方法」「貧困にみる不登校の特徴と対策」「自治体による子ども・貧困対策の制度、施策、解釈の違い」「無料支援の良し悪し」などが議論された。

6)支援者研修

経済的困窮の子どもに限らず、子どもたち全体をめぐる社会環境にフォーカスし、「地域で子どもを見守る社会」をつくるための講座を3回開催。  
(1)7/10 嶋村仁志さん(TOKYO PLAY)「子どもの声を聴く大人になろう」参加者28名
(2)9/11 西川正さん(ハンズオン埼玉)「『あそび』でつながる場所をつくる」 参加者28名
(3)1/22 武田信子さん(武蔵大学)「社会で子どもを育てる」 参加者59名
◆学童や子ども関連団体、教育関係者、行政関係者が静岡県西部地域から広く参加した。子どもにとっての「遊び」は身体の発達や社会性・創造性を育む上でも非常に重要だが、今の社会には子どもが自力で行ける範囲に自由に遊べる公園や居場所が乏しく、「経験の貧困」から子どもの体や情緒に問題がおきている。では、子どもの遊び場や居場所を、大人はどのように作り、見守ったらよいか、地域や学校との連携はどうするか?プレーリーダー、コミュニティワーカー、臨床心理士、それぞれの立場から、講義とグループワークを交えて講座を行った。

7)シンポジウム「ほっとけない!子どもの貧困 シンポジウム2018」

日時:2018年2月25日(日)10:00~16:00
会場:アクトシティ浜松 コングレス21/研修交流センター 52、501、404
参加者:午前の部 87名、午後の部 84名(実質127名)
主催:認定NPO法人 浜松NPOネットワークセンター
共催:社会福祉法人 浜松市社会福祉協議会   
後援:浜松市、浜松市教育委員会
協力:子ども育ちレスキューネット、フラットアイ、NPO法人えんあって、NPO法人サステナブルネット、基礎屋

<午前の部> 基調講演「子どもの貧困~見えない貧困の背景にあるもの」

      大西 連さん(自立生活支援センター・もやい)
◆子どもを取り巻く背景やその対策や制度をわかりやすく解説。「貧困」という言葉の定義、この20~30年の社会の変化、具体的な数値やデータを提示しながら、「見えにくい貧困」に迫った。最低賃金でフルタイムで働いても、静岡では月13万3千円、年収160万円にしかならない。非正規労働が特に若い人に拡大して、社会全体が低所得化している。
この状況はマクロの問題としては共感されるが、「40代でも非正規」といった個別の話になると「それは自己責任では?」という見方になりがち。貧困が構造的な問題でありながら、個人の話だと感じられるものが違うことは、思い当たる節のある人も多かったようだ。
子どもの貧困対策は、投資的側面で語られがちだが、SDG’sなど国際的には「権利」の見方が強い。自己責任論が強いと声をあげられないし、自己責任では解決しない。地域のなかで「支え合い」をつくっていくことがカギ、と結んだ。

<午後の部> 全体会:実践報告「子どもの貧困~私たちにできることは何?」

浜松市の報告 浜松市子ども支援課 課長 髙山 厚志さん
N-Pocketの報告 浜松NPOネットワークセンター 井ノ上美津恵

分科会A「子どもの学習支援」

登壇者:伊藤真一さん(袋井市スクールカウンセラー、基礎屋)、遠藤雄策さん(みらいTALK、小児科医)、平川悦子さん(浜松市スクールソーシャルワーカー) 参加者 28名
◆子ども支援の現場にいる方々が、それぞれの立場から子どもの状況と学習支援の事例、その役割と強みを紹介。学習支援をするには、学校生活のつながりや家庭の生活状況の把握、子ども本人や保護者との信頼関係作りが必要となってくる。対象となる子どもには、発達障害や心の病、家庭環境や成育歴などに複合的な問題を抱えるケースが多いため、適切な支援をするにはアセスメント(聞き取り調査)も大きなカギを握る。
学習支援者からは「どこにあるかわからない地雷を踏む危険も感じている」という声があがり、様々な困難を抱える子どもの支援に必要な配慮やスキルについて議論された。一方で、学習支援のスキルに加えて高い専門性を求められると担い手のハードルが上がり、一般市民が支援に関わることが難しくなってしまうというジレンマもある。参加者が、学習支援経験者とこれから始めたい人と二極化していたため、議論がやや未消化になった部分もあった。

分科会B「子どもの居場所」

登壇者:近藤博子さん(気まぐれ八百屋だんだん 店主)
話題提供者:福岡達喜さん(えんあって)、ロビンス小依さん(みんなが主役創造タウンとみつか)、木俣雅代さん(食べる遊ぶつながる) 参加者 22名
◆近藤さんは「子ども食堂」の名付け親で、「子どもが一人でも安心して来られる無料または低額の食堂」とのことで、経済的貧困の子どもだけの食堂ではない。今は、子どもに限らず、誰もが関係性の貧困の中にあり、どの人もホッとできる場所が必要、と大田区での取り組みを紹介し、問題提起を行った。
浜松で居場所づくりに取り組む3人からは、小さな居場所を作る際の課題や配慮について紹介。「えんあって」の子ども食堂は資金面や人手のやりくりを、「みんとみ」は「自分のできる範囲で」のマインド、「食べる遊ぶつながる」は「持ち寄り」で「参加者をお客様にしない」コツを紹介した。
居場所づくりは、誰かが頑張って何か特別な取り組みをするというより、日常生活の延長でできる方向性で、「初めてきた親子がまた行こうと思う居場所はどんな場所?」についてグループワークでディスカッションを行った。

分科会C「高校のキャリア支援と校内カフェ」

登壇者:中村守孝さん(静岡県立新居高校定時制)、池田佳寿子さん(地域若者サポートステーションかけがわ) 参加者 22名
◆高校卒業後の進路で、就労は貧困の連鎖を防ぐという意味でも重要。新居高校定時制では、正規で就職できる確率が一番高い「新卒」時にしっかり就職を決めることを目標に、総合の時間を使って4年間かけて就職指導、キャリア支援を行っている。特にアルバイトを推奨して、その経験を就職活動の強みとして活かしている。高校教員だけでは限界があるので、外部機関に協力を仰ぎ、就職相談のプロやサポーターに入ってもらっている。
さらに、キャリア支援の時間の後に「校内カフェ」を開き、高校生と雑談する場をつくった。家庭や学校以外の大人と出会い、生徒が抱える困難の発見と支援へのつなぎという目的の他に、先生が支援者を知ること、支援者同士のつながりを作るというねらいもある。高校生と「上手に雑談」するコツも伝授された。