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2016年度~


万斛公園市民協働支援事業

門構え

東区中郡町にある「万斛公園(仮称)」の予定地では、市民協働による公園づくりを推進する一環で、園内の古い建物3棟を修復して活用する方策について検討しています。
市民が運営する「交流拠点づくり委員会」で市民協働のアドバイザーとして、建物の修復を行うための資金集め、市民が主体になった維持管理や運営のしくみを構築するための支援を行っています。

計画地の概要

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浜松市東区中郡町、中郡小学校の北側に位置する室町時代からの庄屋・旧鈴木家の約4,300坪の屋敷跡地が、2010年12月に「地域の憩いの場」として活用して欲しいという所有者の意向により、浜松市に寄付されました。
この屋敷跡地一体は、明治期には中郡村(現在の浜松市西ヶ崎町、中郡町、大瀬町)と呼ばれていた地域の中心であり、近代のそれぞれの当主は当時の村の村長を務めたり、地域の有名企業の役員を務めた地域の名士で、村の西方にあるため地域住民から「大西さん」と呼ばれ親しまれていました。
建物の周りには屋敷林や、田んぼ、堀跡があり、敷地跡の下層からは飛鳥時代からの遺構や遺物も見つかっています。
屋敷跡地の公園化にあたって、浜松市は建屋撤去の方針でしたが、平成27年度に公園づくりのワークショップを開き、母屋と他2棟は修復費やその活用を住民が担うことで存続となりました。

支援内容

(1)修復に必要な資金集めの支援

助成金・補助金の情報提供、申請書の書き方のアドバイス、寄付金を集めるための情報提供、助言を行った。

(2)多世代の市民が参加できる公園運営のしくみづくり

NPO法人旧鈴木家跡地活用保存会は、主に自治会長や長年地域活動に関わってきたシニアの男性で構成されており、子育て世代のニーズを汲み取ることが難しいことから、実際に公園を使うお母さんたちの考えやニーズを聞き取るために、座談会とアンケート調査を実施した。→ アンケート結果

また、意見交換のための座談会「子どもたちが遊ぶ近所の公園について言いたい放題会」を開催し、万斛公園の計画紹介、公園づくりの事例紹介、意見交換を行い、市民5名+外部アドバイザー4名から公園について様々な意見を伺った。

(3)建物の活用方法についての支援

保育園の保護者を対象にしたアンケートの結果から、1)子どもが過ごすスペース、2)お母さんたちの交流、多世代交流の場、3)おむつ替えと授乳ができる場所、についてアドバイスを行った。

(4)情報発信の支援

NPO法人旧鈴木家跡地活用保存会のホームページを作成し、設立の経緯や思い、活動概要、連絡先を掲載し、広い世代への認知度の向上を図ることを狙った。また団体の信頼性も上がり、助成金や寄付金が集まりやすくなることが期待できる。

考察:現在小さな子どもを育てているお母さんの考え

A:座談会に出席したお母さんたちから出てきた意見

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お母さんたちは子育てに精一杯で余裕がないが、本当は子どもを外でのびのび遊ばせたいと考えている。遊具と言うよりは、自然の中で子ども自らが遊びを見つけ、成長していけるような遊び場を望んでいる。そこには大人の関わりが必要なので、高齢者が関わってくれることは歓迎していて、多世代交流もしたいと思っている。
ハード面では、トイレ、授乳室、おむつを替えられるような空間が欲しい。またカフェがあるなど、センスが感じられる空間だとなおよい。

  1. 設備が整った公園が無く、遊び場探しに苦労している。外に行きたいのに、行きたい公園がない。おむつを替えたり、授乳できる場所がない。草がぼうぼうでなく、適度に管理されていてほしい。
  2. 普段、部屋の中で子どもにかかりきりで、余裕が全然無い。色々考えなくていい、お金をかけなくていい、ふらっと行けてリラックスできる場所がほしい
  3. 本当は子どもを外でのびのび遊ばせたいが、できない事情が多い。家の近くに公園がない、不審者が不安、公園に行っても遊び仲間がいない、などの理由がある。
  4. 子どもの成長を促すような遊び方をさせたい。例えば「プレーパーク」では遊びの中にたくさんの要素があり、挑戦する力、コミュニケーションをとる力、失敗してもめげない力など、学校では学べない「遊び場」の力がある。
  5. 子どもは小さい頃から外に行くことが成長のために大切。怪我をするのも、事故があっても親が責任を取るという考え方が広まれば、浜松でもプレーパークのような取り組みができるかもしれない。浜松では金指で月1回プレーパークをやっているが、常設型はない。

※プレーパークとは:「自分の責任で自由に遊ぶ」をモットーにした遊び場。子どもたちが、あらかじめ設けられた設備や遊びのプランの選択肢に縛られることなく、自由に変更や改変を加えて自分たちのアイデアとスタイルで楽しみ、発見や創造する喜びを味わえるのがプレーパークの哲学。冒険遊び場とも呼ばれる。

  1. 自然農業的な活動をしている場所では、子どもたちは遊具は無くても、畑の間の畝を走り回って楽しんでいた。「遊具=こういう遊びをする」ではなく、自然のままで、ただ穴を掘ったり、水を流すのも遊びのひとつ。
  2. 自然は最強の遊び仲間。自然の中で遊べる子は遊びが豊かな子。自然の中に入ると、何をしてよいかわからず遊べなくなる子もいる。
  3. 小学生のお母さんからは、自分たちで遊び場について考え、大人と交渉したりすることを通じて子ども自身が成長。結果よりもこのプロセスが子どもの成長には大切と感じたという意見も。
  4. 高齢者と同じ空間にいて関わりを持つことについては、肯定的意見が多い。高齢の方に「かわいい子ね」と声をかけてもらえると安心を感じる。地域とつながっている感じがする。
  5. 子育てに手一杯で余裕がないので、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒だと助かる。お母さんだけのコミュニティになってしまうと、かえって他の人は入りにくい。
  6. キッチンスペースがあって、梅干しや味噌作りなどを教えてもらえる場があるといい。
  7. 男の子は囲碁将棋を覚えても対戦相手がいないので、多世代で対戦できるといい交流になる。→ 実際にそういう場をつくってみたが大変だった。という経験談も。
  8. お母さんが高齢者の傾聴ボランティアのようになってしまったという意見が出たが、これは運営の方法で解決できると思われる。「そういう場所があればいい」と空間を用意するだけでなく、運営方法への言及もゆくゆくは必要と考えながら、空間づくりをしていく必要がある。
  9. センスが感じられる空間に魅力を感じる。吉祥寺の井の頭公園には自然の木漏れ日の中にあるカフェがある。子どもを遊ばせるだけでなくて、大人も自然と集まる魅力的なポイント、森を感じる要素があるもいい。
  10. 子どもだけでなく、大人も居心地のいい場所が大切。大人が楽しめないと、子どもも楽しめない。
  11. 働くお母さんが多いので、放課後の子どもの居場所があるといい。学童に入れなかった子がプレーワーカー(子どもの遊びをサポートする人)のいる場にやってくる。学童に預けるお金すら払えない人が来られる場所になるといい。

B:保育園の保護者からアンケートで出てきた意見

●公園についての意見

  1. 公園は「使ってみたい」がほとんどで、地元での期待の高さが明らかになった。
  2. 「公園をどう使ってみたいか?」は、「遊具で遊ぶ」が9割でダントツ1位であったが、それ以外にも「芝生でまったり日向ぼっこ」ののんびり系の要望が6割、「木登りや穴掘りなどの冒険」「子どもが自然に触れる体験」の自然に触れたりや冒険遊びなどアクティブな遊びへの要望も5割以上、「餅つきや夏祭りなどイベント参加」「ママフェスタやフリマなどへの参加」などの交流系の要望も2~3割と需要があることが明らかにできた。
  3. 個別意見としては、駐車場への要望が非常に多い他、広い年齢層の子どもたちが安全に遊べるようにしてほしい。ボール遊びもできるといい。大型の遊具といった要望が上がった。

母屋

●建物の使い方についての意見

  1. 「子どもの放課後の居場所」が5割で、働くお母さんが抱る悩みを映した結果となった。「子育てひろば」は、お母さんたちが交流をしたり、相談ができる場だがこれも4割近くあり、お母さんたちが今抱えている問題をこの場所で解決できたらという意思がうかがわれる。
  2. 「お母さんたちの交流の場」「多世代の交流の場」と交流系も3割くらいと要望が多い。講座やイベントができる場」とお母さんたちがなにかを表現できる場を求めているのも、公園の使い方の「餅つきや夏祭りなどイベント参加」「ママフェスタやフリマなどへの参加」と同様の結果が出ていて、需要があることが明らかになった。
  3. 「歴史を知ることができる場」は順位としては下だが、この場所の価値などが若い世代にまだあまり知られていないわりに16%という数字は決して少なくない。
  4. 設備としては、「オムツ替えスペース」「授乳できる場所」「子供用トイレ」などへの要望が多かった。
  5. 「放課後児童会(学童保育)」「子どもたちが宿題をできるスペース」など学校以外で子どもが過ごせる場所になるとよいという意見も多数あった。

総括:子育て世代にどう関わってもらうか?

●子育て世代に関わってもらうためのきっかけ

現在のお母さんたちは、子育ての中で余裕が無く、何らかの助けや交流によって解決ができないかと考える傾向がある。また働くお母さんたちが増え、小学校以上の子どもたちの放課後や休日の居場所が必要と考えている。この2つの課題を解決するアプローチがあれば、お母さんたちが何らかの形で公園の活動に関わってくれる可能性がある。

具体的には、前者は、子育て広場などで関わりを持ちながら、イベント参加などで交流のきっかけを作り、実際の公園活動の担い手になってもらうといった流れ。後者の小学生以上の子どもの居場所については、他地区での実例などの情報収集をするとともに、お母さんたちとの話のやり取りができる場を、最初はアンケート、次に実際に出て来てもらっての具体化の話というように順を追って進めて行けば、自分の子どもの居場所のことなので関わってくる可能性がある。

一気に課題解決はできないので、プロセスをどう組んでいくかを十分に吟味し、お母さんたちに時間をかけて投げかけていくことが重要。NPO単独では難しければ、プロセスをアドバイスできるNPOや行政の担当課と協働して行っていく方法もある。

●全体として

お母さんたちの要望は多岐にわたるが、公園で提供できることと、できないことは整理する必要がある。できることは、駐車場や自転車やボールでも遊べる広い広場、豊かな自然、交流拠点としての建物(今回検討中)。
できないことは、たくさんの遊具や、大きな子を対象とした大型遊具など。それに代わるものとして、ゆっくり過ごせる芝生広場やこの場所の歴史を背負った樹林、歴史遺産があり、これらを大切に守り育て、子どもたちに豊かに遊んでもらいたいと考えるNPOのスタッフがいる。

2015年度に浜松市が万斛公園のために行ったワークショップでは、「70代が子どもの時代は公園など無かったが、自分たちで遊びを生み出していた。今も本来的には遊具が無くても子どもは遊べるはずだから、公園に遊具などいらない」という意見もあった。
それももっともだが、今は自由に遊べる外の空間は限られており、安心して遊べるのは地域の公園くらいという実情も理解する必要がある。また、核家族化や少子化で、お母さんたちが周囲からの助けと子育ての経験を得ることが、数十年前と比べると格段に難しくなり、孤立している。社会情勢から働くお母さんも多い。

こういった中で、地域とのつながりが欲しい、多世代の交流が欲しい、本当は子どもにはもっと自然豊かに創造的な遊びをさせたいと思うお母さんたちが多いことが明らかになった。この点では、ワークショップで決めた公園の方向性は、高齢者世代とお母さん世代の間に齟齬はないということも、明らかになったと言える。

今後の動きとしては、「各世代が共通して望んでいる目標を、確実に時間がかかっても実現していくためのプロセス」をどう作っていくかを確実に、意識して作ることが最も重要だと考える。