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浜松市子育て情報サイトの運営

協働の定義としてよく言われる、異なる立場の組織が主体的に関わる、得意分野を活かして共通のゴールに向かう、互いに対等でWIN-WINの関係にある、の他、さらに継続した公益的な活動を評価して、浜松市内NPO法人が行う協働事例を取り上げました。

NPO法人 はままつ子育てネットワークぴっぴ

活動概要

浜松市子育て情報サイト「ぴっぴ」を運営し、子育てに関する様々な情報を収集発信している。


はじまり

<背景・地域課題・関係者の想い>

 2004年当時、浜松市のホームページ上には子育てに関する情報を一元化したものはなく、児童家庭課(現在の子育て支援課)が総合サイトを作成するためのプロポーザルを実施した。
 最も情報を必要としているのは就学前・入園前の乳幼児を持つ母親や転入者である。情報の収集元は専らウェブサイトに頼ることになるのだが、検索しても浜松市ではキーワードに行き着くだけで、詳細な情報を入手することができなかった。
 子育てサイトの立ち上げを市民協働で進めたいという行政サイドの呼び掛けに、ITの知識を持ち合わせ、子育て実践中で情報の一元化を望むメンバーがいるNPOが手を挙げて、事業がスタートすることになった。

<協働のパターン>

  1. 経験値:前例なし、ゼロからのスタート
  2. 関係性:その他
  3. 事業費等:委託(公開プロポーザル)

<パートナーと役割>

  1. はままつ子育てネットワークぴっぴ:企画運営、ニーズ調査、ウェブサイト作成
  2. 浜松市児童家庭課:情報収集、関係窓口の調整
  3. 浜松市情報政策課:システム構築・UD設計協力

<協働事業の開始時期>

2004年


変遷と成果

<手がかかったところこそ協働の価値>

最も時間を割いたのは、子育て世代のニーズ把握・行政の情報収集・民間の情報収集・原稿の書き起こしなど膨大な作業であり、担当課と手分けしながら掲載情報を取捨選択していった。
 複数にまたがる行政サイドの窓口として担当課が率先して動いて集まってきた情報は、一読しただけでは意味がわからない行政特有の表現であふれていた。サイトを利用すると考えられる若い親たちにとって、わかりやすい言い方に直さなければ公開しても価値がない。これらの行政用語の解読・翻訳作業が必要で、それをまた担当者に返して添削し、戻ってきたらまた朱筆を入れるということを根気よく続けた。
 情報提供を受けた部署は、児童家庭課のほか、保育課、次世代育成課、児童相談所、健康増進課、障害福祉課、男女共同参画課、教育委員会など8つに及ぶ。さらに情報政策課からユニバーサル設計に関して逐一アドバイスを受けた。
 利用者を想定してのニーズ調査をもとに、コンテンツを仮置きして、使用後の感想に即して修正をかけ、完成に向けて行政職員と一丸になって走りきった。おかげで、全国初の画期的なサイトが完成したと自負しているという。

<継続したサイトの維持管理>

サイトは公開して完了というわけではなく、次年度以降もテストを繰り返しながら内容の充実を図ってきた。3年目には携帯電話からもアクセスできるよう改良を加えている。
 サイトの維持管理は少数精鋭で担ってきたが、事業費が充当できなければ継続はやはり難しい。6年目の2009年から、浜松市ファミリー・サポート・センターの指定管理事業を受託することでスタッフの確保ができるようになったため、質の高い充実した情報の継続した提供が可能になった。


特色

●当事者目線の価値ある情報

行政用語など堅苦しい表現は、すべて普通の言い回しに手直ししている。表現のみならず、コンテンツやイラストの細部にわたるまで見やすさ、わかりやすさを意識して、利用者の声をもとに修正を繰り返してきた。行政と民間の情報が融合して、関連情報が一元化された本サイトは、実に貴重な存在である。

●行政職員の柔軟な対応

児童家庭課も情報政策課も、担当者は30~40代の子育て世代のお父さん、お母さんで、日々の実感として、NPOが口にする「当事者目線」の重要性を理解していたことが大きい。仕事の面白みがわかり、必要とされる行政内の手順について一通り経験を積んでおり、なおかつ新しいことにチャレンジしようという熱意にもあふれた人材であったことが、短期間で事業成果を出すことができた要因ではないかとNPO関係者は振り返る。

●外部評価を励みとして

IT活用や子育て支援に関する数々の受賞により、子育てしている親でも自らニーズや課題を発信できることが、スタッフのモチベーションアップにもつながっている。2006年「日経地域情報化大賞日経新聞社賞」、2007年「しずおか子育て未来大賞・ふれあい子育て応援部門・奨励賞」、2009年の総務省「u-Japanベストプラクティス2009」

●子育てからまちづくりへ

入口は「子育て」でも、目指しているのは結局「住みやすいまちづくり」だということに気がついたという。「子どもを守る防災ワークショップ事業」を保護者対象に始め、「女性特有がん検診受診率向上プロジェクト」も立ち上げて、地域のつながりの大切さを再認識している。