特定非営利活動法人浜松NPOネットワークセンター

N-pocket活動検索

キーワード一覧

多文化なわかものたちからの提言 2005

自分たちの経験を元にまとめました

自分たちの経験を元にまとめました

私たち、日本の高校や大学で学んでいる外国をルーツとする若者30人が、7月22~23日の二日間、「わかものたちの多文化共生全国交流会」に全国から集まりました。この交流会は2回目で、日本で生きる自分たちの経験を語りあいました。

現在、何が障害になって問題を起こしているのか、どのような制度ならば日本の学校制度に適応して、高校や大学にも進学できて、将来に希望を持てるのか。

私たちは、自分たちの経験した困難を、前向きに受け止めて、乗り越えてきましたが、個人の努力だけではなく、制度的に保障されれば、後に続く次の世代は、もっと楽に将来の希望を実現できるのではないかと考え、以下のことを提案します。

提言

1. 各国の編入制度の互換性について

現在、外国籍の子どもは母国での学年とは関係なく、日本に来た時の年齢によって、日本の制度に合わせた学年への編入や入学が行われています。

ペルーで飛び級して15歳で高校を卒業していても高校2年生に編入した例や、小学校2年生で来日したけれど、年齢が日本の3年生に該当していたために、3年生に編入して、どちらの国でも2年生の勉強はしていない例、日本国内で転校する場合でも、自治体によって編入する学年が違う、などの例があります。

日本の制度に当てはめるのではなく、柔軟に対応するしくみがほしいです。

2. 外国籍の子どもの学習支援体制について

1) 日本語の獲得は必須

言葉の壁は大変大きく、この壁をどう乗り越えたかによって、日本での進路が決まってしまう現状にあります。言葉の支援が、多様な方法で行なわれていることに感謝していますが、授業時間の枠外で、日本語と母語のわかる人に継続的に指導が受けられること、また、学習支援員は両国の制度や文化を理解しているバイリンガル・バイカルチャーな人であることが理想的です。
また、私たちが、何がわからなくて、何を知る必要があるのかを理解してもらうために、国際担当の先生や支援員に研修が用意されることを希望します。

2) 母語・母文化を失わないために

私たちは、複数の言語と文化を持っていることを、誇りに思っています。母語と母文化は、私たちの将来の人生を豊かにし、自分が何人なのか、家族や自分との関係について悩む時、私たちを支えてくれます。文化は二つの社会を結ぶ豊かな架け橋でもあります。
本来、母語・母文化を学び、伝えることは家庭の責任だと思いますが、学校や地域社会でも学べる場所や機会がつくられることを希望します。

3) 教育情報・進路情報について

私たちは、日本語の先生、担任や進路指導の先生、家族、NPOなどの支援組織、先輩、友達、教会の神父様などから学校や進路の情報をもらって、高校や大学、大学院まで進むことができました。これらの情報をタイミングよく得られたことは、幸運でした。
誰でも、これらの教育情報を簡単に手に入れられるよう、多言語の「教育情報センター」や「相談センター」を地域ごとにおいてください。

3. 高校進学の機会の拡充

1) 進学ガイダンスを多言語で

高校進学のためには、小学校の時から日本の教育制度をよく理解していることが大切です。各地で進学ガイダンスが行われることによって、進学の機会が開かれ始めたことを実感しています。
私たちも高校生として、進学ガイダンスに協力していますが、進学ガイダンスを多言語で開催することは、親の理解をすすめるためにも重要です。

2) 高校進学特別枠と進学後の日本語指導をセットに

外国籍生徒のための特別枠は重要ですが、進学後も、言葉や教科などの個人的な学習支援体制がないと、せっかく入学しても授業についていくのが難しいケースもあります。ぜひ、日本語指導とセットにしてください。

3) 入試にあたって配慮を

外国籍生徒には、会話では問題がなくても、読み書きではどうしても言葉のハンディがあります。「漢字にルビをふる」「母語による論文を認める」「時間を延長する」などの配慮を希望します。

4) 定時制過程の再評価を

外国籍生徒にとって、定時制高校は重要な進学の選択肢の一つです。定時制では、少人数の指導を受けることができます。また、昼間は大学進学のための資金を貯めるために働くこともできます。日本の文化になじむ為にも社会との接点は大切です。定時制高校を外国籍生徒の学ぶ場として再評価してください。

5) 奨学金制度を

私たちは、自分の学費のためだけでなく、家族のために働きながら学んでいる人も少なくありません。留学生の扱いを受けることができませんが、大学進学のための奨学金制度があれば、進学はもっと楽になります。

4. 交流の必要性

私たちは浜松で開催された「全国交流会」で、同じ立場や環境にある若者たちを出会うことで励まされ、将来の希望を新たにすることができました。当事者同士の交流によりアイデンティティについての悩みも共有することができました。
同時に、日本人との交流で、自分たちの文化に関心を持ってもらうことも私たちの支えになることがわかりました。私たちも努力しますが、学校の授業や総合学習などで、自分たちの国の文化・社会・歴史を紹介できる機会をもてることを希望します。

終わりに

高校・大学進学と希望に向かって歩むことができた私たちは、多くの人たちから励ましを受けて、ここまで来ることができました。
今回の交流会で出会った私たちは、自分の経験を生かして、社会に貢献できる職業を持ちたいと希望しています。心理学者やカウンセラー、日本語教師や法廷通訳、国際弁護士などです。そして、二つの国、二つの文化の架け橋となって働きたいと思っています。
私たちに続く後輩たちが、困難にくじけることなく、日本の社会で希望を持って学べるように、制度を政策的に検討してくださることを希望しています。ありがとうございました。