特定非営利活動法人浜松NPOネットワークセンター

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2006年度

ケアする人の何でも相談会 in アンサンブル江之島

2006年12月2日、市民の側から提案し、市との協働で行なうことが望ましい事業(たねからみのり)として、浜松市労政課・保健予防課・障害福祉課と一緒に、「なんでも相談会inアンサンブル江之島」及び「問題解決のための行政の横断的連携と民間の異分野専門家集団によるケース会議」の実施にこぎつけました。


アンサンブル江之島って?

アンサンブル江之島は、複合的目的を持つ福祉協働センターとして2005年4月にオープンした浜松市の施設ですが、グループホーム、デイサービス、相談機能等、知的・精神に障害を持つ人々の生活就労支援を複数の法人が行なっています。


何のために相談会を?

複合的な問題を抱えているが、特にケアする側が単独では解決できないでいるケースをとりあげ、センターとしての機能パワーアップをはかりながら、
1)対応部署が複数にまたがる問題に対応できる、浜松市としての横断的システムを模索する
2)相談内容の問題解決のために専門家会議で、「成年後見制度」「発達障害児者対応」「特別支援教育」など具体的な動きについての情報交換を行う
ことを目的として開催しました。


どんな問題があった?

開催当日はセンターの地理的困難さがあったためか、電話による事前相談があったにも関わらず来訪者はゼロでした。実は、当日の相談件数に左右されないよう、事前に専門家会議で討議されるにふさわしい事例を調査しておりました。そしてケアする立場にある多くの人々のヒアリングを行い、地域の主なる課題として、「教育」「情報」を柱とする以下のような状況が浮かび上がっていたのです。

  1. 社会福祉施設を利用してこなかった人、中途障害者等は既存の社会資源を利用しにくい。
  2. 心の病をもつ人が医療現場から地域社会へ移行(就労・教育)するための社会サービスが不足している。
  3. NPOやボランティア活動によるサービス等、制度外の社会資源の発掘が十分にできておらず、情報の一元化が必要。
  4. 高齢等が理由で介護力をなくした親と、障害のある人の同居希望をいかに実現するか。
  5. 言語のバリア(障害のある在住外国人の支援時)

個人情報保護条例のバリア

  1. 特に、個人情報保護条例の主旨が誤解され、手渡ししてほしい情報が必要な人に伝わっていかないという声があちこちからきこえている。例えば、視覚障害者団体では、新たに視覚障害をもった人に伝えたい情報がたくさんあるのに、それを渡す手立てがないと悩んでいる。

この問題に関連して専門家会議に出席した委員からは、
「知的障害のある子どもの状況を交番の巡査や民生委員に理解してもらっていたはずなのに、地域で事件になってしまった。民生委員に家族が個人情報を共有してほしいことを伝えても「点」で終わってしまう。個人が他の部署に移動してしまうと元の木阿弥。入手した情報を共有することがタブー視されてきた。しかし、支援のために、情報が正しく伝え活用してもらうことを望む」
といった主旨の発言もありました。

軽度発達障害の義務教育期間外の子どものための教育支援機関が不足

  1. 発達障害の子どもを受け入れていた定時制高校の数が減少し、進学のための多様な選択肢がなくなってきている。(これは在住外国人の進学問題でも同様である)
  2. 評価の枠が狭くなってくる高校生になって、はじめて高機能自閉症などがみつかったりするが、義務教育ではないので支援サービスが見つからない。私立高校・専門学校でこの問題が多い。
  3. 相談窓口では市立保育園が障害幼児教育を実施していると聞いていたが、実際には受け入れがなされず、一つずつ聞いて回り、実際にはミッション系の私立保育園で受け入れられている。

保育園の問題については、地域療育等支援コーディネータである委員より、
「一般の園の障害幼児の受け入れ状況を調査している。13園に断られた例もあるが、受け入れ園と本人の相性も考慮して選ぶことを大事に考えなくてはならない」
という発言があり、障害幼児の受け入れ先に関わる良質の情報のありかが浮上してきました。


気になる子のための教育環境

「教育」に関しては、もっと早く関わっていれば、というケースが多く、障害幼児の受け入れについてきちんとした施策が必要です。学童期になると、担当教師に対する評価も絡み、余計に「気になる子」の問題を外に出せなくなってしまうことで一層状況を悪化させている、と報告がありました。
社会の問題が複雑に絡む教育現場にどういう方策が残されているのだろうかといささか頭を抱え込みましたが、策定中の浜松市教育総合計画の「宣言4 ニーズに応じた子ども支援をします」はぜひ成功させてほしい内容です。障害のあるなしに関わらず、豊かな教育環境を子どもたちのために用意することは大人の責任です。


情報の一元化

措置から自己選択・自己決定に流れる中で「情報」は非常に重要であり、情報の一元化のためにも、サンダルで訪れられるような駅前観光案内所ならぬ福祉総合案内所があると安心して相談できるのではないでしょうか。


全体像を描くために

このように、複雑・専門化する福祉施策においては、その全体像を描くことは一人の専門家の力量を超えるため、多様な相談に対応可能な民間人材と行政担当者が連携するネットワークが形成されると、障害を持つ人たちに効率的かつ横断的な支援体制を築くことができることに確信をもてる会議になりました。

こうした連携により、浜松市全体の福祉施策が、有機的につながる可能性が期待できるはずです。この相談会から見えてきた次のステップに今後どう上っていくか、N-Pocketの来年度の事業として計画中です。参加された行政担当者も「このままでは終わらせないで、ぜひ次のステップに進めたい」と共感を示してくださったことは大きな成果でした。

相談会終了後には報告書を作成し、参加した委員の皆さんも含めて「たねからみのり」の事業としての全体像も共有しました。

★ これらの活動の成果を次につなげるため、2008年、浜松市教育委員会との協働事業として制度や社会資源の調査活動を経て「ニーズのある子ども育ち・応援マップ」を公開しました。