特定非営利活動法人浜松NPOネットワークセンター

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静岡県ジョブコーチ派遣事業2011

1.ジョブコーチ派遣事業報告

平成23年度のジョブコーチ派遣事業は、平成23年4月20日から平成24年3月30日までを実施期間とし、213名に対して2,702回の支援を行うことができた。

本事業は、特定非営利活動法人「浜松NPOネットワークセンター」が受託し、その実施組織「しずおか障害者就労支援ネットワーク」の各拠点に所属する59名の静岡県ジョブコーチにより行われた。今年度は浜松拠点から中遠拠点が分離し、拠点は8か所となった。

支援対象は、就職または職場適応に課題のある知的障害、精神障害、身体障害、発達障害等のある人及びその他支援を必要とする障害のある人、並びにこれら障害のある人を雇用しようとする事業主または雇用している事業主であり、支援要請を受けて以下のように支援を行った。

なお、支援要請は、障害のある本人、その家族、事業主、就労支援機関、ハローワーク等から随時受けている。

1)アセスメント

本人及び家族と施設、学校、医療機関等の関係者と面談して、情報収集を行い、支援対象者の特性を把握して、就労上の予想される問題点を洗い出した。また事業所を訪問し、職務分析、課題分析、職場環境の評価を行い、支援計画を立てた。

2)現場支援

支援計画に基づいて、支援を行った。
作業工程表、チェックシート、日報、治具などを必要に応じて作成し、職務をスムーズに遂行できるよう工夫したほか、職場での基本的マナーの習得、コミュニケーションのアドバイス、通勤に関して問題のある場合は通勤時の支援も行った。
事業所に対しては、ジョブコーチのサポートがなくなった後も職場内でナチュラルサポートが得られることを前提に、支援対象者の障害特性について説明を行い、仕事の内容、指示の出し方、指導方法について具体的に助言、提案を行った。支援対象者に直接係わる職員に具体的なアドバイスを行うとともに、事業所全体への障害理解と受入れのための勉強会も提案し講師を務めた。
支援途中及び支援終了時には個々にケース会議を行い、事業所人事担当者、現場担当者、ハローワーク、関係する施設の担当者、本人、家族と支援の成果について、今後の就労上の課題、その対策などについて話し合う機会を持った。

3)フォロー

支援回数の目安は13回であるが、長期に見守りの必要なケースが増加傾向にあり、フォローとして対応した。
また過去年度において支援したケースについても、必要に応じて事業所を訪問し、支援対象者、担当者から聞き取りを行って職場定着に寄与した。このフォローにより再度集中支援が必要なケースも発掘できた。

以上のように支援を三段階に分けているが、緊急性のある支援依頼に関しては、すぐに現場に入って状況を把握しつつアセスメントを同時進行させるといった、現実に即した対応もしている。

今年度の支援の特徴として、長期の支援を必要とする対象者が増えたことが挙げられる。困難なケースについては昨年度設置したスーパーバイザーが加わり、支援方法の見直し、事業所に対するアプローチの変更、課題の捉え直し等を行って問題解決を図った。スーパーバイザーは支援に対する助言と共に、個々のジョブコーチや拠点の抱える悩みについても相談・助言を行い、緊張を伴うケースを担当するジョブコーチの精神的支えともなっている。

もう一つの特徴として、事業主から個々の対象者支援ではなく、障害者雇用全般へのアドバイスを求められた点があげられる。具体的には、大手スーパーから全店舗における職務の切り出しやマッチング等についての相談、これから障害者雇用を始めようとする事業主からの相談などである。本委託事業の業務には含まれない事項に関しての支援依頼については、必要性に応じて個々にボランタリーに活動したが、現場を熟知するジョブコーチが対応できる仕組みづくりが今後必要であると考えられる。

また、本委託事業とは別に今年度「しずおか障害者就労支援ネットワーク」が取り組んだ活動として以下のものがあげられる。

例年どおり、個々の支援と平行して、障害者職業センターの行う講演会、ハローワーク主催の障害者就職合同面接会、特別支援学校主催の就業促進協議会、障害者就業・生活支援センター、障害者就業・生活ミニセンターのほか、福祉施設などが行う会議やセミナーなどへ積極的に参加して、障害のある人の就労支援にかかわる関係機関との連携を深めるよう努めた。

ジョブコーチの養成に関しては一昨年の富士、昨年の浜松に続き、今年度も浜松NPOネットワークセンターの自主事業として「静岡県ジョブコーチ養成セミナー2011」を島田市で開催した。その結果、全講座を41名が受講し(公開講座を含めると延べ84名が受講)、全課程を修了して拠点に所属し、ジョブコーチとなるべく実習を開始した者が23名いた。そのうち、今年度末までにジョブコーチとなって活動を始めた者は9名であった。これらの人員を加えても、なお引き続きジョブコーチの人材確保は課題となっている。

さらに昨年に続き、静岡県の地域人材育成プラン事業を活用して、浜松NPOネットワークセンターにおいて10名の緊急雇用スタッフを採用し、充実した研修プログラムによるジョブコーチ育成事業を行うことができた。

静岡県経済産業部職業能力開発課の「障害者委託訓練における訓練受託機関開拓等事業」においては、沼津技術専門校、清水技術専門校、浜松技術専門校からの依頼を受け、今年度は全県で訓練受託企業事業主にジョブコーチのスキルを生かしたアドバイスを行い、効果的な訓練の実施と訓練後の雇用促進に結び付けることができた。

2.ジョブコーチスキルアップ研修報告

静岡県ジョブコーチに対する期待は年々高まり、依頼される支援の内容は、より複雑な課題をかかえるようになっている。このような状況において、どのジョブコーチが担当しても同等のレベル以上で支援を提供できるよう、各ジョブコーチの基本的技能の底上げが求められる。

浜松NPOネットワークセンターと拠点代表者との間で、現在、ジョブコーチに不足していると思われるスキル、今後必要となるスキルを検討して、スキルアップ研修を企画、開催した。

今年度は、最初に、パソコン操作について基礎知識を学ぶ講座を開催した。パソコンは、ジョブコーチの報告業務を能率的に、また整理しやすくするものとして欠かせないものであるが、個々のジョブコーチのスキルには大きなばらつきがあり、拠点ごとの集計業務を困難にしている。一方、支援対象者にとっては、非常に有効なコミュニケーションツールとして最新情報端末が脚光を浴びている。これらのことから、ジョブコーチにとって、パソコンの基礎的な操作を身につけていることと最新のIT技術を知っておくことは今や不可欠な要素となっている。これらを踏まえて、内容を2回に分け、同じ講師から学ぶ機会を設けることができた。

また今年度は、企業が障害者雇用にどのように取り組んでいるか、精神障害のある人の特性と課題、労務管理の基礎知識、コミュニケーションと、基本的なことを押さえる研修に力を入れた。更に、近年職種として増加している清掃業務について、ジョブコーチ自身がプロの教えを受ける機会を設けた。

以上は、いずれの研修もその分野の経験豊富な第一人者を招くことが出来た。

最後に、今年度の大きな特色として挙げておきたいのは、10人のジョブコーチインターンの発表を現役ジョブコーチが聞く機会を設けることができたことである。

ジョブコーチインターンは県の緊急雇用対策として6月から人材養成を始めたものである。さまざまな年齢、経歴の10人が、研修を重ね、またジョブコーチ支援に同行しながら学びを深めて行き、最終的には各自がテーマを決めて学んだことを発表することができた訳であるが、この10か月の間、スキルアップ研修に同席したり、ジョブコーチ支援において実際に現場で指導にあたった現役ジョブコーチたちが、インターンの変化、成長ぶりを間近に見たこと、最後に学んだこと考えたことを聞けたことは、おおいに各自のモチベーションアップにつながったものと推察される。

総じて、今年度のスキルアップ研修は、静岡県ジョブコーチが、今一度原点に立ち返り、基本を見直し、改めて支援の目的を確認することに役立てることができたものと考える。