特定非営利活動法人浜松NPOネットワークセンター

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静岡県ジョブコーチ派遣事業2008

1.ジョブコーチ派遣事業報告

平成20年度のジョブコーチ派遣事業は、平成20年4月21日開始、平成21年3月26日契約終了までに、159名、2021回の支援を実施することが出来た。

本事業は、特定非営利活動法人「浜松NPOネットワークセンター」が受託し、県内8か所の拠点に所属する40名の静岡県ジョブコーチが、就職または職場適応に課題のある知的障害、精神障害のある人及びその他支援を必要とする障害のある人並びにこれら障害のある人を雇用しようとする事業主または雇用している事業主を対象に支援を行うものであり、支援要請を受けて、以下のように支援を行った。
 なお、支援要請は、障害のある本人、その家族、事業主、ハローワークから随時受けている。

1)アセスメント

本人及び家族、施設、学校、医療機関等関係者と面談して、情報収集を行い、支援対象者の特性を把握して、就労上の予想される問題点を洗い出した。また事業所を訪問し、職務分析、課題分析、職場環境の評価を行い、支援計画を立てた。

2)現場支援

支援計画に基づいて、支援を行った。
 作業工程表、チェックシート、日報、治具などを必要に応じて作成し、職務をスムーズに遂行できるよう工夫したほか、職場での基本的マナーの習得、コミュニケーションのアドバイス、通勤に関して問題のある場合は通勤時の支援も行った。
 職場に対しては、職員に対し、支援対象者の障害特性について説明を行い、仕事の内容、指示の出し方、指導方法について助言、提案を行った。同時に、ジョブコーチのサポートがなくなった後も、職場内でナチュラルサポートが得られるよう働きかけた。
 支援途中及び支援終了時には個々にケース会議を行い、事業所人事担当者、現場担当者、ハローワーク、関係する施設の担当者、本人、家族と就労上の課題、支援の成果などについて話し合う機会を持った。

3)フォロー

必要に応じて事業所を訪問し、支援対象者の職場定着を確認し、担当者から聞き取りを行った。

個々の支援と平行して、静岡県障害者雇用促進協会や職業センターの行う講演会、ハローワーク主催の障害者就職合同面接会、特別支援学校主催の就業促進協議会、障害者就業・生活支援センター、障害者就業・生活ミニセンターのほか、福祉施設などが行う会議やセミナーなどへ積極的に参加して、障害のある人の就労支援にかかわる関係機関との連携を深めることができるよう努めた。就労支援ネットワーク富士においては、ネットワーク会議を毎月主催し、ネットワークづくりの地域の中心的役割を果たしてきた。

特に今年度は、年々増えてきている支援要請に対して、それに応え得る質の高いジョブコーチの数を確保することが急務となっていたため、浜松NPOネットワークセンターの主催事業として、ジョブコーチ養成セミナーを開催した。その結果、延べ70名が受講し、全課程を修了して拠点に所属し、ジョブコーチとなるべく実習を開始した者が9名いた。
 うち、今年度末までにジョブコーチとなって活動を始めた者は1名であった。引き続き、ジョブコーチの人材確保は課題となっている。

また年度末には、静岡県主催、企画運営を浜松NPOネットワークセンターが担当して、雇用支援フォーラム「元気な企業が元気でいるわけ」を開催した。
 大企業において障害者雇用率1位のファーストリテイリング(ユニクロ)のCSR担当者を東京から講師に招き、講演会、意見交換会、ジョブコーチの活動報告などを行った。企業や施設、障害のある当事者など160名の参加を得て、障害者雇用に係る関心を掘り起こすことができた。

他には、支援に至る以前の相談が目立った。内容は、大きくは二つあった。一つは、何社も面接に行ったがなかなか就職が決まらずジョブコーチに何か支援してもらえないかといった、景気後退による雇用情勢の悪化が背景にあると考えられるものである。もう一つは、高次脳機能障害を負った患者の今後の対応を問い合わせる、医療機関からの相談である。
 ジョブコーチとして現場に赴き、支援を展開することは本務であるが、ジョブコーチの認知度が高まるにつれ、いろいろな相談が持ち込まれてくる。それに対応するためにも、関連他機関との連携強化はさらに進める必要があると考えられる。

2.ジョブコーチスキルアップ研修報告

今年度も、浜松NPOネットワークセンターと拠点代表者との間で、現在とこれからのジョブコーチにどのようなスキルが必要であるかを協議、考察し、スキルアップ講座を企画、開催した。

まず、障害者雇用の理念とナチュラルサポートといった基本的な事項を再確認することから始めた。
 障害者雇用の根拠となる制度・法律を押さえることは、支援が単に発生する支援依頼に対処するということでなく、法律に定められた権利保障の一環であることを理解することが出来た。また、公による障害者雇用の計画は平成23年を一つの区切りとして進められている。障害者雇用の現状があり、23年度までの目標があり、国と県の動きの中に我々の支援が位置づけられていることを理解することができた。
 続いて、県の担当官から障害者雇用に関する県の取り組みを詳しく説明していただき、それぞれのジョブコーチが、障害者雇用促進に向けた静岡県の取り組みのもとに支援を展開していることを確認した。

さらに、支援において関わりの多い、特別支援学校の取り組みを、静岡県教育委員会特別支援課担当者から聞いた。高等部の就職実習については、富士、沼津、袋井、浜松などでジョブコーチ支援の実績を上げているところであるが、県教委の日頃の就職に係る取り組みを聞くと同時に、今年度の「障害のある子どもの能力発掘・開発事業」についても聞くことができた。

以後は、島根県の特例子会社ごうぎんチャレンジドまつえ、NPO青少年就労支援ネットワーク静岡といった他の事業所の活動を聞く機会を得た。
 また、近年増えつつある発達障害に関するテーマ、多様な事例のある精神障害に関するテーマ、よりよい支援に繋げるための支援報告書の書き方に関するテーマなどを取り上げて理解を深めた。

これらの研修の中に、逐次、ケース検討を盛り込み、見解を話し合うことにより、個人では解決し得ない支援の課題を、複数のジョブコーチが共有し、深めることができた。ケース報告の中には、就労に結びつかなかったケースも挙げられ、そこから得た学びこそがよりよい支援を生み出すきっかけになるものと考えられる。