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できることからはじめていく・ユニクロの障がい者雇用の取組み

(株)ファーストリテイリング グループCSR部 重本直久 氏

株式会社ファーストリテイリング CSR部の重本と申します。僕が推進役となって2001年から進めてきましたユニクロの障がい者雇用について、事例のご紹介も合わせてお話しさせていただければと考えています。現在私はユニクロの親会社ファーストリテイリングで、障がい者雇用や社内のコンプライアンスの推進をしています。

障がい者雇用の会社方針としまして
1)1店舗1名以上の採用
2)障がいのあるスタッフとともに働くことで顧客サービスの向上につなげる
3)障がい者の自立支援を目的とした社会貢献活動
の3点をあげています。2001年から障がい者雇用を全店で進めた結果、現在では8.06%(2008年6月現在)、在籍される数で言うと、700名の方が在籍をされています。お店の数が国内760店舗ほどなので、だいたい9割ぐらいの店舗には障がいのある方が配属されている状況です。特徴的な事として、最近は特例子会社の設立によって集中して障がい者雇用を進めていくという事が行われていますけれども、弊社の場合はそれは選択しておりません。健常者・障がい者が同じ職場で働いていきたいと考えております。その結果、障がい者雇用の優良事業所ということで厚労大臣表彰、内閣総理大臣表彰をいただきました。どんな方が働いているかというと重度、軽度いろんな方ですが、専門家にお店を見ていただいた結果、ユニクロに知的障がいの方が働く職域がたくさんあった、ということで大半は知的障がいの方です。

何でここまで進めているのかという背景についてお話ししようと思います。ポイントは4点ぐらいに整理できるんだろうと思っています。1点目は、一番大切な推進力になっていますけれども、経営者側が障がい者雇用しますという意思を表明して全社的に進めて行ったという事だと思います。ノウハウは全くありませんでした。
2点目はお店がそれに沿ってちゃんと実行していったこと。じゃあそれをいかにやっていくか、会社方針を徹底していくか、スピード感を持ってやっていくかという実行力は、特に営業部の土壌としてあったわけですね。いわゆるパート・アルバイト、そういった方々は店長が決められた人件費の枠内で採用して良いわけなんですよね。店長が責任を持って採用して育成していく。そこに障がいのある方が一人増えたというか、障がいのある方もその枠内でやってくださいという事になったに過ぎないんですね。
3点目の店舗の環境なり職域についてですけれども、どういう基準で採用しているんですかという質問を良くちょうだいします。基本的には、通勤・食事とかトイレ等の日常生活はご自分でお願いしますというのが前提です。お客様配慮の改築はしていっていますが、障がい者雇用をするためのお店の改修とかはしません。それから、働く時間は無理なく原則週30時間ぐらいは働いて欲しいということで採用しています。最後はこれは抽象的なんですけれども、販売員としてふさわしい方を採用して行きたいと考えています。雇用形態ですけれども、社内では準社員いわゆるパートの方として採用しています。
仕事の割合(職種)ですけれども、開店前・営業時間中・閉店後それぞれ、売り場・店内の倉庫(バックヤード)・駐車場・トイレなんかで、単純な仕事だけを取り上げてみてもかなりの種類があって、やらなければならない事は日々たくさん出ているわけですね。1店舗平均35人ぐらいの方が在籍していますが、そうするとあなたはじゃあ補正専任だ、というようなことができるわけです。適材適所の配置ができているということが障がい者雇用には活きてきているのだと思います。では、たいていの方はバックヤードで補充の準備をしたり、補正の専任であったり清掃をやってらっしゃったりということになるわけですが、裏方の仕事ばっかりで心が折れないかということですね。でもそこはユニクロの店長は部下を動機付けして戦力化していかなければいけない責任がありますから、あなたががんばって補充の準備をしてくれたおかげで機会ロスを防げた、お客さんの満足に繋がってるよということをフィードバックしていくと、毎日毎日こういう単純な仕事ばっかりしているけれどもそれは目先の事じゃなくてお客様の満足に繋がっているのだと、それが動機付けに繋がってるんだと。その結果、戦力化になっているのだと思います。
 4点目、社会の関わりということで括りましたけれども、やはり法定雇用率1.8%を達成しなければいけない、社会貢献をしていかなければいけないというのは動機になっています。納付金も結構多額になります。そんな中で私どもの社長は、成功事例があってなおかつそれがよいことであったら全店でやりましょう、とういう単純な発想だったのだと思います。でも僕らが障がい者雇用の専門家でもなんでもないわけですね。そこで、職業安定所であるとか地域の障害者職業センターのご支援は本当にたくさんいただきました。これが無ければこの数字の達成は難しかったのだろうと思っています。ジョブコーチの支援事業であるとかトライアル雇用みたいな事も支援制度はたくさん準備されていますので、その制度はフル活用させていただいています。そして社会というほどではないんですけれども、我々も成功事例、失敗した事例も共有させていただきました。

では最後に、障がい者雇用をやったらどのような効果があるのですかということですが、僕は確実に店舗スタッフの成長、顧客サービスの向上に繋がっていると確信しています。お店のスタッフの中に障がいのある方がいらっしゃると、何でもかんでも配慮すれば良いんだなということではなく必要な時に自分のやれる範囲でやれば良いんだなということが直感的に分かる。これが障がい者雇用のほんとに大きな効果だと僕は思います。その結果障がいへの理解が深まって自然体で接する事ができる、あたふたしなくて済むって事ですね。その結果、お客様が必要としている所だけにピンポイントでここは販売員として声をかけた方が良いでしょうというような事が直感的に分かることが最大の効果だと思います。

いろいろ話しましたけれども、障がい者雇用を1店舗1名でやっていったからこそ、できた事ってたくさんあると思います。たとえば、1.8%ぐらいで良いでしょうみたいなことで進めて行ったとすると3~4店舗に1人ぐらいを配属しておけば良いよな、というイメージなんですね。そうなるとその3~4店舗というのは面倒な事をさせられたとか、やらされ感たっぷりだと思うんです。でも全店でやるからには、それは公平だしその目的もはっきりしますよね。顧客サービス向上のためにやるから小売業であるユニクロ全店でやるんですということが現場にメッセージとして伝わるんですね。ですから1.8%ではなくて、結果として8%を超えていますけれども、全店でやる、これがユニクロである程度障がい者雇用がうまく行っている秘訣と言えば秘訣なのかもしれません。これからは精神障がい者の雇用であるとか課題は多いですけれども、できる事から始めていくという考え方に従って100%を目指して進めて行きたいと考えています。