特定非営利活動法人浜松NPOネットワークセンター

N-pocket活動検索

キーワード一覧

浜松特別支援学校の余暇支援

協働の定義としてよく言われる、異なる立場の組織が主体的に関わる、得意分野を活かして共通のゴールに向かう、互いに対等でWIN-WINの関係にある、の他、さらに継続した公益的な活動を評価して、浜松市内NPO法人が行う協働事例を取り上げました。

NPO法人 魅惑的倶楽部

活動概要

 2ヶ月に1度の頻度で土曜日に、特別支援学校で児童・生徒・保護者を対象に一般の有志によるコンサートやパフォーマンスの披露を企画運営している。


はじまり

<背景・地域課題・関係者の想い>

2002年度より学校週休2日制が導入され、地域で子どもたちを受け入れる様々な活動が始まった。しかし、自らが住む地域を越えて通学する浜松養護学校(現・浜松特別支援学校)の子どもたちの多くは、居住する地域との関わりが薄いため、土日の居場所は限られており、家庭に負担がかることが予測された。保護者からは、学校に有料で預かってもらえないかという声も上がっていた。
 障害のある子どもたちも地域と関わりを持ちながら、休日を有意義に過ごせるよう、NPOのメンバーであった浜松養護学校のPTA役員がアイディアを出して、定期的にコンサートを開いていたNPOのメンバーに協力を求めた。学校側の支援も取りつけて、体育館でのコンサートが実現した。
 その後、NPOのメンバーがスターバックスで働いていたことをきっかけに、イベントへの協力として飲料の出前を呼びかけたことで、企業も参加・協力するイベントへと発展していった。
 いろいろな団体と協働する時、自分たちの要請だけではなく、相手のメリットも提示し、信頼し合える関係をつくることを心掛け、人や団体とつながりあえることで思わぬ波及効果や笑顔を生みだせるよう活動している。

<協働のパターン>

  • 経験値 NPO側に事業に関連する実績があった
  • 関係性  NPO主導・パートナー協力
  • 事業費等  助成、その他(ボランティア)

<パートナーと役割>

  • 魅惑的倶楽部:企画運営、参加者手配、イベント開催
  • 浜松養護学校(当時):会場提供、保険加入、イベント協力(職員参加)
  • スターバックス:飲料の出前サービス

<協働事業の開始時期>

2002年:浜松養護学校、2009年:スターバックス


変遷と成果

●初対面は感激の涙から

初めてのコンサートで舞台に立った演奏者は、子ども達の反応に胸がいっぱいになり、涙があふれて最後まで歌いきることができなかったそうだ。障害のある子どもたちと直接接する機会は、日頃はほとんどない。障害者の自立が謳われても、受け入れる社会に理解者が存在しなければ、現実には難しい。歌って、踊って、楽しく自由に過ごし、感情をストレートに表現する子どもたちの触れ合いを通して、多くの精神的な報酬を得られ、障害に対する理解も深まったという。子どもたちにとっても家庭と学校以外の居場所は大きな楽しみになり、家族の負担を和らげることにもなっている。

●広がる人の輪

「Magic Heart」と名付けられたコンサートは、次第に口コミで出演者が増え、奇数月第4土曜日の恒例イベントになった。コーラス、健康体操、手品、ブラスバンド、多様なジャンルや年代の出演者が無償で協力している。
障害のあるなしや、年齢に関わらず、多様な人々をつなぎ合わせることで、思いもよらない笑顔が生まれ、それが心のユニバーサルデザインにつながっている。

●企業の参画

= 企業だからできること
 毎回、主催者が子どもたちのために飲み物を用意していたが、スターバックスで働くNPOのスタッフが、イベントへの協力=飲物の提供を依頼したことから縁がつながった。コンサートへの出前を通じ、企業のスタッフが子どもたちと触れ合い、障害への偏見がなくなることによって、障害者が来店した時に戸惑わなくなったという。
このような協力は市内一店舗から、県西部の店舗を巻き込む活動に発展。最初につながりを持った店舗は、社内で社会貢献の表彰を受け、活動に弾みがついた。それぞれの立場で無理なく関わることで、互いにWin-Winの関係が築かれている。


特色

●障害への理解を広げる

 障害のある人、ない人をつなぐことで、自然な形で障害への理解を深めることができている。障害への無関心・無理解な態度は、日常生活で当事者と出会う機会がなくて、接し方がわからないという場合が多いようである。
楽しい雰囲気の中で、ほかの出演者やスタッフと子供たちのやりとりを間近に見て、自分自身も触れ合い、頭ではなく体験として腑に落ちる。社会的な課題の一端に触れる貴重な場である。

●参加の場を提供

 趣味や特技を活かした活動、企業による本業にまつわるCSR活動、さまざまな立場の人々がボランタリーに参加している。出演する、飲物を提供する、司会・音響・照明など運営をサポートする、それぞれの技量に即した社会参加の機会を生み出すことができている。しかも、すべての関係者が何らかの役割を果たして、互いに好影響を与えている。