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全国交流会2005 提言

2005年11月
外国人教育支援全国交流会2005 参加団体一同

私たちは、日本各地で多言語による在住外国人ための「高校進学ガイダンス」をここ10年にわたり開催してきました。外国人児童生徒の不就学問題の解決には、子どもの学習継続の動機となる、日本社会で自己実現の過程を歩んでいる身近な先輩の”ロールモデル”が不可欠と考えているからです。

2005年7月に浜松で開催した「第2回多文化共生わかもの全国交流会」で、高校・大学・大学院に進学した30名の外国籍の若者たちが、経験を共有して提言にまとめました。進学を果たした彼らの共通点は、困難をプラスに捉えている前向きの姿勢、家族や先生、地域の支援団体から具体的な支援や激励を受けたことに対する感謝の気持ちです。
しかし一方、彼らは異口同音に、自分達の辿った困難な経験ではなく、外国人児童生徒の誰もが、もっと容易に進学できる制度的な保障が必要であることを訴えています。

この若者の提言を受けて、翌8月に15都道府県でガイダンスを主催している25の団体・機関が、浜松で第2回「外国人教育支援全国交流会」を開催し、当事者や教育関係者も交えて、各地の課題を出し合い、「提言」をまとめました。

現在、日本人の高校進学率が95%前後であるのに対し、外国人は推計50%未満ときわめて低い割合に止まっています。学習意欲があっても、日本語の壁、情報不足、経済的困難などの事情から進学を断念している子どもたちが依然として多いからです。
ガイダンスによる情報提供だけでなく、入試制度や進学後の支援に関する制度的保障があれば、この状況はかなり改善されると思われます。外国人の子どもたちにも、日本の社会で多様な選択肢によって未来が開かれるよう、以下のことを提案します。

自治体および自治体教育委員会に対する提案

1.外国人児童生徒の実態把握

外国人児童生徒の教育を保障するために、国籍別・母語別に、在籍状況、高校・大学への進学率、中退率などの実態調査を実施し、施策に反映させること。

2.多言語による進学情報の提供

子どもの進学には、保護者の理解と支援が重要であるが、日本語を十分理解できない保護者も多い。「進路ガイダンス」をはじめとした多言語による教育・進学情報を提供し、選択肢を明確に提示、説明すること。

3. 高校入試について

1)「外国人特別枠」の設置・拡充
2006年度の入試において、公立高校に外国籍生徒の「特別入学枠」がある自治体は、全国でも17都府県にすぎない。高校進学の機会の平等を保障するために、外国人生徒のための特別入試枠を設置すること。
すでに「特別入試枠」がある自治体についても、特別枠の実施学校数、受検資格、学校数、定員、試験内容、転校時の取り扱いなどについて、外国人生徒の受皿として実質的に機能するよう、検討、見直しをはかること。

2) 高校入試における「特別措置(配慮)」
日常生活で使用される「生活言語」に対し、学校の授業で使われる「学習言語」は習得に5~7年かかると言われている。また非漢字圏出身者にとって、漢字は大きなハンディキャップである。
日本語の能力によらずに能力や学力を評価できるよう、入試時のルビふり、辞書持ち込み、時間延長、母語による作文や面接、などの措置をとること。

3) 定員内不合格の禁止
一部の都道府県では、高校受検者数が合格定員に達していないにもかかわらず、学力不足を理由に得点が低い受検者を不合格としている。
入学定員を遵守し、日本語能力が発展の途上にある外国人生徒にも学習の機会を保障すること。

4.高校入学後の学習サポート体制、支援員の設置

義務教育課程ですでに一部で導入されている学習活動の支援を行なう「支援員制度」を、高校課程でも設置すると共に、日本語を中心とした学習支援や適応指導を行なうこと。

5.外国人教育に関わるリソースセンターの創設

外国人教育に関する資料、情報、人材のリソースセンターを設置し、教員や保護者、市民が利用できる機関として運用すること。

6.「外国人教育指針」の策定・運用
細かな施策の充実はもちろんであるが、その全体を支える骨格となる指針が重要である。各自治体は「外国人教育指針」を策定し、その理念に基づいて具体的な施策を推進すること。

7.外国人児童生徒を「特別支援教育」の対象に
文部科学省による「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」(2003年3月)においては特別支援教育の対象は「障害のある児童生徒」に限定されているが、自治体によっては外国人児童生徒を対象にして制度を運用している例もある。
日本語教育等の支援を必要とする外国人児童生徒についても、同制度の対象に含め、包括的な教育政策の在り方を早急に検討すること。

日本国政府に対する提案

1.外国人児童生徒に関わる教育政策の確立

文部科学省による「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」(2003年3月)においては特別支援教育の対象は「障害のある児童生徒」限定されているが、日本語教育をはじめ様々な支援を必要とする外国人児童生徒についても、特別支援教育の対象に含め、包括的な教育政策の在り方を早急に検討すること。

2.自治体における「外国人教育指針」の策定

自治体によっては、独自の「外国人教育指針」が策定されているが、都道府県としてはわずか7府県にすぎず、策定されている市町村も多くは関西地方の自治体であり、近年外国籍住民が増加している東海地方や関東北部等には、教育指針が策定されていない。
文部科学省は各自治体に対し、「外国人教育指針」の策定を指示すること。また、各自治体がその理念に基づいて具体的な施策を推進し、個々の教育現場でそれを活かすよう、指導すること。

3.大学進学の保障

子どもの学習継続の動機として、日本社会で自己実現の過程を歩んでいる身近な”ロールモデル”が不可欠である。モデルとなる先輩を多く輩出させることができるよう、 大学においても、外国人の特別受験枠等の方策を立て、門戸拡大のための施策を講じること。

外国人教育支援全国交流会2005参加団体

  1. ガイダンス主催者
    1. 札幌子ども日本語クラブ
    2. 秋田県こどもの日本語ネットワーク
    3. 埼玉進学ガイダンス実行委員会
    4. 房総ネット・進路ガイダンス実行委員会
    5. CCS/世界の子どもと手をつなぐ学生の会(東京)
    6. 多文化共生センター 東京21
    7. カトリック東京国際センター(CTIC)
    8. 多文化共生教育研究会(MCE)
    9. 多文化共生教育ネットワークかながわ
    10. 長野県国際交流推進協会(ANPIE)
    11. 静岡市国際交流協会(SAME)
    12. 浜松NPOネットワークセンター(N-Pocket)
    13. 可児市国際交流協会(岐阜)
    14. 三重県国際交流財団
    15. 外国籍市民支援ネットワーク推進事業・進路ガイダンス実行委員会(滋賀)
    16. 滋賀県国際協会(SIA)
    17. 大阪府在日外国人教育研究協議会
    18. 大阪市在日外国人教育研究協議会
    19. 関西国際交流団体協議会
    20. こうべ子どもにこにこ会
    21. 兵庫日本語ボランティアネットワーク
    22. 兵庫県在日外国人教育研究協議会
    23. 奈良県外国人教育研究会

ほか、全25団体

  1. 当事者の青少年の団体
    1. AJLAN(浜松)
    2. HOME FOR VOICE(東京)
    3. 奈良外国人・青年の会

提言取りまとめ・文責

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